家族の代わりに返済することはよくない?

今回は、また、債務整理のお話です。

内容的には、記事タイトルのとおりのお話です。
家族の代わりに借金を返済してあげるということは、基本的にお勧めできませんというお話です。

私は、これまで、色々な債務整理の相談を受けてきました。
そのなかには、「過去には、家族(父母など)に借金を代わりに払ってもらって、完済したことがあるのですが、その後、生活費に困ってまた借入れをするようになり、返済できない金額になってしまいました」という相談が、複数件ありました。
ですが、今では、家族と関係が悪くなってしまって、連絡が取りづらくなっている、という状況にあったりします。

そして、もう返済はできないということで、自己破産の依頼を受けまして、破産手続の準備を進めていくことになるのです。
ただ、ご家族との関係の修復までお手伝いできることはなかったかなと思います。

借金は減って借入可能額は増える

借金がある状態は良くないということで、ご家族が借金を返済してあげる、ということになりますと、そのときはもちろん、返済すれば借金はなくなります。

ですけれども,ご家族のお金もその分なくなってしまいます。

そして、借金がなくなっても、手元のお金が増えるわけではないので、結局、というと言い方はよくないようですが、また生活費が足りないから借入をしてということになりますと、また何年かあとには借金が返せないくらいの金額に膨れ上がってしまいます。

また新たに借入をしてしまうきっかけというのは、色々です
生活費が足りないので少額の借入から…という場合もありますし、病気や事故で治療費が必要になったとか収入が減ったため、という場合もあります。
それ以外にも、皮肉な話ですが、一括返済したことで、金融業者からは「きちんと返済できる人だ」と評価されて、クレジットカードを使える金額が増えてしまい、その結果、つい大きな買物をしてしまう、という場合もあったりします(使える金額が増えるまではいかなくても、返済している分は新たに借入できてしまうのが通常です。)
破産手続などの債務整理をしますと、金融業者は数年間はお金を貸してくれなくなるので、それで生活が不便になる面はありますが、借金で大きな買物をしてしまうリスクは無くなります。

そもそもサラ金の利息は高い

今のご時世、銀行にお金を預けても利息はつかないですが、借金やクレジットカード、分割払いなどによる利息や遅延損害金は、10~20%がざらにあります。
年間利息10%でも、50万円借りていると、1年間で5万円の利息がつくことになりますから、単純計算だと月々4000円以上は利息を払っている(借金そのものは減らない)、ということになってしまいます(細かいことをいえば、返済だけしているぶんには元金も減っていくと思いますが、追加の借入をして、元金が50万円のままなら、利息は5万円になります。利息が15%なら、7.5万円になります)。

ですので、100万円とか200万円の借金になると、今時の、手取り20万円以下の収入では、返済は相当に難しくなります。200万円までいくと、それ以上は金融業者も貸してくれなくなって、支払いができなくなることも多いです

そして、そのときには、ご家族からは、「前に代わりに返してあげたのに、また…」「もう借入はしないと約束したのに…」と思われてしまって、支援してもらうこともできないということが、よくあるのかなぁ…、というように、弁護士の目から見てて思うんですね。

もしかしたら、場合によっては「家族に破産なんてしてほしくないから」ということで、一度目のときには、ご家族の側から強い要望があって返済してる場合もあるのかもしれないですけれども。

ただ,例えば200万円の借金をご家族が代わりに払ってあげて、それで借金を整理した、完済したという場合にも、また手元にお金がないから借金をしてしまうということですと、上述しましたように、良い解決になりません。

むしろ破産手続などの法的な債務整理をしたほうがよいことは多い

また、他の記事でも詳しく書きたいと思うのですが、破産をしたからといって戸籍に載るということはありません(昔の法律では、戸籍に載っていたので、誤解している方がいますが、現在の法律では載りません。)。普通は、周りに気づかれるようなこともあまりありません
就いている職業によっては、破産手続中は資格を制限されてしまうために破産できない、例えば個人再生手続を検討するといったこともあります。ただ、個人再生手続でも、相当に借金は減額になることが多いですし、色々の事情を考えて、やはり破産手続を取ったほうがよいということもあります。
こういった検討は、弁護士に債務整理を依頼した後に、少し気持ちの余裕を取り戻してから再検討することもできます。
もちろん、弁護士も、詳しくご説明をします。

私としては、もし、借金で困っている方のご家族が生活再建のためにお金を出して頂けるという場合には、一回、破産手続を取るなどして借金を整理する手助けをする、そして、その後の再出発のための資金をあげる(贈与する)、ということのほうがお互いのために理想的ではないか、というようには思うのです。

破産手続をするのにも一定の費用が必要になることがありますが、その手続費用を親族が援助することは、問題ありません。
また、破産手続が終了した後に、家族間で合意をして、再出発をするために贈与をすることは問題ありません。(ただし、念のために書きますが、破産手続の前に贈与した場合には、その受け取った金額が、破産手続のなかで債権者に対する返済にあてなければならない可能性が出てくるので、注意してください。破産手続は、まず返済できるぶんの資産は返済にあててから、借金の免除(免責)を考える制度です。)

世の中には、会社の経営をしていて今さえ乗り越えれば再起のチャンスがあるとか、破産できない資格があるとか、事情がある人の代わりに一時的に借金を返済してあげるということも、全く考えられないことではないのですが……、基本的には、タイトルのとおりです。

家族の代わりに借金を返済してあげるよりは、まず、債務整理の相談をすることを勧めてあげてください。